【共生レポート⑫】心と身体が元気になる子どもの居場所と、若者たちが安心して働くことができる場づくりを目指して!

 宮城県地域共生社会推進会議では、宮城県内の困りごとを抱えた高齢者・障害・子ども等の分野を超えた支援や地域住民の支え合い活動及び自治体・社協・福祉関係団体、NPO、企業などの連携事例を調査し、活動内容などについて情報発信を行っています。
 今回は気仙沼市で子どもの居場所づくりや若者たちの働く場づくりの取組を行っている「フリースペースつなぎ」の中村氏に取材してきましたので、御紹介します。

インタビュー:フリースペースつなぎ 代表理事 中村 みちよ 氏

-この取組を始めた経緯を教えてください。[674 KB]  

 この取組は東日本大震災後の2013年2月から始まったもので、その当時娘が学校に行けなくなった時期があったことや、母親の介護が必要になるなどの生活の変化があり、教職員を退職しました。退職後、気仙沼市で学校に行けなくなった子どもやひきこもりがちな若者たちの居場所づくりをしたいと思い、フリースペースつなぎを始めました。

 

-具体的にどのような取組をされていますか?

 フリースペースつなぎでは、平日週5日学校に行けなくなった子ども達が自分のやりたいことを中心に、自分達で考えたプログラムに自分のペースで参加しています。また、週1回の子どもミーティングで自分達がやりたいことを提案・企画し、実現させることで、子ども達の自己肯定感を高め、自立して社会に出るための基礎になったらいいなと思ってやっています。
 フリースペースつなぎの活動の特徴のひとつに、みんなで行う昼食作りがあります。子どもミーティングでメニューを決めて、自分達で料理したものをみんなで食べ、片付けまでしてもらいます。みんなで作って食べることで、野菜が駄目だって言っていた子も少しずつ食べられるようになり、家族の方から「すごく体力がついた」と喜ばれています。

-子どもミーティングでは、他にどのような話し合いが行われますか?

 毎年、季節ごとの様々なイベントを行っていて、そのイベントについて話し合うことが多いですが、一番大きいイベントは中学3年生がいる時に修学旅行を計画します。今年も中学3年生の子がいるので、本人を中心にどこに行き、どこを見て、どこのホテルに泊まるのかなど、全部自分達で計画を立ててもらっています。時には失敗することもありますが、自分達で計画した修学旅行は思い出もより深まります。過去には韓国に修学旅行に行った子もいて、クラウドファンディングを活用したことで、色々な人とつながり、普通では体験できないような修学旅行を実現することができました。[876 KB]

▲昼食づくりの様子[638 KB]

▲ つなぎハウス増築に向けた話し合いの様子

-最近「つなぎ工房」という若者の働く場づくりにも力を入れていると聞きましたが、きっかけなどを教えてください。

フリースペースつなぎの取組は今年で12年目を迎え、これまでは子どもや若者たちが安心できる居場所づくりを行ってきましたが、ずっと課題としてできていなかったことがありました。それが若者たちの働く場づくりです。フリースペースつなぎの中でできる作業に限界を感じていた時に、市内の八日町でカフェを経営している方に「一日カフェみたいなのができたらいいな」と相談したところ、御了承いただき、カフェ体験をする機会を得ることができました。そういう経験があった後、偶然そこの向かいのお店を間借りしないかとの話をいただき、若者たちの働く場になればと「つなぎ工房」を始めることにしました。

-つなぎ工房の取組について、教えてください。

 つなぎ工房を始めるにあたって、地域の皆さんがどんなニーズがあるのかを知るために東北大学の学生の協力を得て、フリースペースつなぎの子ども達と一緒にニーズ調査を行いました。その調査では、一人暮らしの高齢者が多くなってきている反面、近所に日用品や食料品を買うところがないとの話が多く聞かれたため、まずはそういったものを販売するお店にすることにしました。他にも、お弁当やお惣菜がほしいとの声もあったため、週1回「ランチクラブ」という会員制の弁当販売を始めました。ニーズ調査を行ったことで、地域の方々と顔見知りになり、お店で働くスタッフや若者が地域の方とコミュニケーションを取りながら、ニーズに合った商品を置くなど地域密着型のお店になっていると感じています。[835 KB]
▲ つなぎ工房改修工事の様子 [874 KB]

▲ つなぎ工房の外観

-この取組は色々な人とつながることで、様々な活動が実現しているように感じますが、日頃から大切していることはありますか?

 子ども達が普段過ごしているつなぎハウスの増築費用や家電はクラウドファンディングでいただいたお金で調達し、机や棚などの家具は専門の方の協力をもらいながら子ども達と一緒に作ったものもあります。フリースペースつなぎのスタッフだけでは、子ども達と社会とのつながりが狭くなってしまうため、なるべく地域の方や専門家の方とつながることで、子ども達の学びが社会に広がり、深まっていくことを大事にしたいなと思っています。

-最後に、今後の展望を教えてください。

 最近、つなぎ工房にいつも来てくれるおばあさんが認知症になり始めているのが気になっていて、いまの症状や状況を共有する場を作る必要があるのかなと思うことがあります。今後、地域包括支援センターや市町村社協につなげられるようになれたらと思っていますし、お店で働く若者も認知症に関する勉強を一緒にしていきたいと思います。 
 私達は東日本大震災を経験して、色々な人とつながり、たくさんいただいたものがあります。今後、少しでもお返しできるものがあれば、お返ししていきたいと思っています。[393 KB]
▲ 秘密基地「つなきち」                     

<取材を終えて>

 今回、気仙沼市で行っている子どもの居場所や働く場づくりを行っている取組について、御紹介しました。最初は子どもや若者の支援から始まった取組ですが、クラウドファンディングや日頃の活動を通じて、様々な人達とつながることで、地域に密着した取組へと変わりつつあるように感じました。また、若者が持つ力が人と人をつなぎ、地域の活性化に少しずつ影響を与えていくものになっていると思いました。今後この取組が生きづらさを感じている若者の輝ける場になることを期待しています。
 今後も各地域の取組について、情報を発信していきます。