宮城県地域共生社会推進会議では、宮城県内の困りごとを抱えた高齢者・障害・子ども等の分野を超えた支援や地域住民の支え合い活動及び自治体・社協・福祉関係団体、NPO、企業などの連携事例を調査し、活動内容などについて情報発信を行っています。
今回は栗原市で農福連携の取組を行っている「有限会社 耕佑」の代表取締役である伊藤氏に取材してきましたので、御紹介します。
インタビュー:有限会社 耕佑 代表取締役 伊藤 秀太 氏
-この取組を始めた経緯を教えてください。
これまではできるだけ地域の若者を雇用
[2 MB]してきましたが、人が集まらなくなったため、平成24年頃から県のトライアル雇用を活用して障害者雇用を始めました。平成25年頃からは近隣の就労継続支援B型事業所から施設外就労の受け入れを開始、その後、就労継続支援A型事業所と出来高契約(サンチュの収穫枚数に応じた報酬)を始めた際、一律の支払いではなく、能力や努力に応じた報酬を支払う仕組みにしたことがきっかけで、一般の雇用と障害者雇用に大きな差異がないのではないかと考えるようになりました。
-具体的な取組内容を教えてください。
就労継続支援B型の方々には、5人1組でサンチュなどの定植作業をしてもらい、チームで目標数値を掲げることで集中して取り組むことができる環境づくりを心掛けています。また、作業の成果に応じて4段階ステップアップすることができ、モチベーションの維持に役立っています。就労継続支援A型の方々には、サンチュの収穫作業をしてもらっており、収穫した枚数に応じた報酬を支払っています。
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▲ 作業の様子① ▲ 作業の様子②
-この取組を継続するにあたり、気に掛けていることはありますか?
令和6年7月にNPO法人BALLOONを立ち上げ、利用者への作業を行う上での支援や職場までの交通手段がない方への送迎対応などを行っています。今は支援員が送迎することで職場まで通うことができていますが、将来的には職場の近くにグループホームの設置を検討しています。また、支援員の人数も十分とは言えないため、現在支援員の募集をしており、よりストレスを抱えない環境づくりにも力を入れていきたいと考えています。
私たちの会社では、「障害者が作った」といったキャッチコピーは表示しておらず、「消費者が普通にほしいものを普通につくる」ということをモットーにしており、障害者も健常者も隔てていません。「適正労働には適正対価」を基本としているため、成果に応じた報酬を支払い、障害の有無に関わらず戦力として見ています。
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▲ 作業の様子③ ▲ 作業の様子④
-今後の展望を教えてください。
農業の業界は従事者の高齢化や担い手不足が問題となっており、その打開策として業界内に福祉を広めていきたいと考えています。ただ、農業も福祉も他の業界と比べて適正な価格がわかりにくいと感じていて、例えば農業では売り手と買い手で自由に値段を決めてしまうところがあります。障害者雇用に対してもどれくらいの対価を支払えばいいのかわからない農家が多いため、農福連携を広めていくためには障害者雇用を行う上での報酬に関する基準を作ることが必要だと感じていて、このやり方が一つの基準になればと思っています。また、令和7年9月に栗原市の社会福祉法人や農業法人、行政などで地域の協議体を立ち上げており、今後情報共有や意見交換などを行う予定としています。これらの取組を通じて、障害者も地域を支える一労働者であることを他の農家に知ってもらい、お互いに共存できる社会を目指していきます。
<取材を終えて>
今回、栗原市で農福連携を行っている「有限会社 耕佑」の取組について、御紹介しました。代表取締役の伊藤氏は元JAの職員であり、福祉に関わったことがない中、農業と福祉の可能性に着目し、NPO法人や協議体の立ち上げに関わるなど、精力的に農福連携を進めています。障害者雇用も一般雇用も隔たりなく、「消費者が普通にほしいものを普通につくる」といった考え方は地域共生社会につながるものであり、今後栗原市での農福連携の取組が広がっていくことを期待しています。
これからも各地域の取組について、情報を発信していきます。




