令和7年8月26日に開催した宮城県地域共生社会推進会議(以下「本会議」という。)は、令和4年2月に宮城県と本会が共同して立ち上げた地域共生社会の実現に向けた取組を支援するプラットフォームで、今回で7回目の開催となります。
本会議では県内の取組事例を通じて、地域共生社会の実現に向けて理解を深めることを目的にオンラインで開催しました。
基調講演「地域共生社会の実現に向けた様々な主体との連携~居場所づくりの実践から~」
宮城県児童館・放課後児童クラブ連絡協議会 副会長 荒木 裕美 氏
<主な発表内容>
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自身の経験から慣れない土地での子育ては、人とのつながりがなく、心身ともにつらい時期がありましたが、同じように不安を抱えながら子育てをしている方々に出会うことで、安心できる居場所ができました。
子育ては家庭や当事者同士の支え合いだけでは限界があり、地域とのつながりが必要だと感じました。そのため、見つけてもらえるのを待つのではなく、自ら手を挙げていかないといけないと思い、NPO法人を立ち上げました。
地域から孤立する家庭はそれぞれ理由があり、相談窓口の制度も必要ですが、本来はコミュニティの中で自然に気兼ねなく話ができる友人など、顔が見える「制度の隙間をつなぐ」「人と人とのつながり」が大事だと思っている。
既存の制度ではつながれていなかったものをまぜこぜにして、子どもから大人まで安心して暮らせる居場所をつくり、活用することで機運の醸成につなげていきたいと考えています。
<発表のポイント>
| 子育てを通じた地域とのつながりは、災害時の助け合いのネットワークになる。 |
| 専門家や子育てボランティアとつながる上で、当事者の目線などの当事者性を大切にしており、ただつなぐだけでは世代間ギャップなどが生まれてしまう可能性があるため、当事者性を理解してもらえるようにフォローを入れる必要がある。 |
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地域共生社会を作っていくにあたり、子どもという存在も仲間に入れて欲しい。子ども自身も社会に参加する主体であり、子どもたちも街を良くしたいと思っている。 |
事例報告「地域共生社会の実現に向けた取組について」
今回は県内で地域共生社会の実現につながる取組みを行っている3団体に御報告いただきました。また、総評として、基調講演をいただいた荒木裕美氏から事例報告者へ質疑応答を行いながら、まとめていただきました。
みさとっこマーケット実行委員会 代表 桜井 志朗 氏
<主な発表内容>
令和4年から美里町で誰もが主役になれるマルシェイベントを行っており、美里町駅東地域交流センターを会場として、キッチンカーブースや出店ブース、オープニングには宮城県小牛田農林高等学校吹奏楽部によるファンファーレと演奏、キッズ向けイベント(ハロウィンウォーク)なども行っています。
4年前に美里町に移住してきた2人の女性から始まったイベントで、美里町の人はなぜこんなに自分の町に自信がないんだろうと思ったことがきっかけで始まりました。
みさとっこマーケットには、小学生から高校生までの学生ボランティアが多く企画から関わっており、子どもの社会体験の場にもなっています。
<発表のポイント>
| 地域に埋もれている人材を発掘、紹介できる場であり、参加者や出店者同士の出会いの場となることで、新たな挑戦につながっている。 |
| 行政主体で行っているイベントではなく、一住民から始まっていることが最大の特徴である。 |
| 人を巻き込みつながっていくためには、受け身ではなく、知っている人が知らない人につなげて広げていく流れを自ら作っていかないといけない。 |
| 今年から実行委員が20~30代の若者に代わるなど、若者が地域に関われる機会を作っていきたい。地域を知るきっかけになることが地域共生社会の実現につながることであり、今後の理想像である。 |
一般社団法人フリースペースつなぎ 代表理事 中村 みちよ 氏
<主な発表内容>
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気仙沼市で学校に行けなくなった子どもやひきこもりがちな若者たちの居場所づくりをしたいと思い、平成25年にフリースペースつなぎを始めました。
気仙沼には若者を支援する団体がないことや、生まれ育った気仙沼で将来働く場所がないこと、イラスト作成などの技術があっても生かす場所がないなどの課題があり、令和7年3月につなぎ工房をオープンしました。
つなぎ工房をオープンするにあたり、東北大学教育学部の学生の協力を受けて店舗周辺地域の地域調査を行い、独居高齢者が多いことと日用品や食料品を購入できる身近な場所のニーズが高いことが判明したため、日用品や食料品、お弁当等の販売を開始しました。
つなぎ工房を始めたことで、地域のイベントに若者が参加するようになり、地域住民との交流が増えたことで、高齢者の手が届かない窓掃除などの要望が寄せられるようになりました。また、商店街振興組合とコラボで駄菓子屋を始めるなど、地元企業と連携した取組が行えるようになりました。
<発表のポイント>
| 子ども達の主体的な学びと自立的な成長を促すため、週一回子ども達が話し合う「子どもミーティング」を行なっており、子ども達の主体性を大切にしている。 |
| つなぎ工房を始めた背景には、子ども達が元気になればそれで社会に出ていけるものだという考えがあったが、実際はすぐに社会に出ていくことは難しく、学校教育が終わってしまうと受けられるサポートはすごく少なくなってしまう現状がある。 |
| 生きづらさを感じている若者に対する地元企業や地域住民への理解が進んでいないため、若者の力を地域に展開しながら、地域住民と一緒になってできる地域づくりを目指していきたい。 |
大崎市民生部社会福祉課生活相談担当兼消費生活センター 主幹兼係長 小野松 恵利子 氏
<主な発表内容>
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大崎市消費者安全確保地域協議会(以下「協議会」という。)は、高齢者等の消費者被害の未然防止や拡大防止等、消費者安全の確保のための取組を効率的にかつ円滑に行うため、平成30年4月に設置されました。
協議会の構成員は、大崎市民生委員児童委員協議会、大崎市社会福祉協議会のほか、介護施設、古川警察署、宮城県北部地方振興事務所、大崎市役所(防災安全課、高齢障がい福祉課)、古川郵便局、新聞販売店などから委員を選出し、年1回程度会議を開催し、情報交換を行っています。
協議会の設置により、消費生活センターの役割や情報発信についての理解と協力・整備、見守り支援の協力体制の強化、協議会構成員間での情報共有・連携などの協力体制の強化、消費者被害の早期発見などが可能となりました。
高齢者の独居世帯が増える中、仕事などで地域住民と関わった際に気になる点があれば、地元の消費生活センターや各市町村の関係課に情報提供することで、消費者被害の防止につながります。
<発表のポイント>
| 協議会の構成員間で個人情報の取扱いができるようになったことで、これまで埋もれがちだった精神疾患や認知症などにより本人の同意を得られないケースについても、構成員から消費生活センターに情報が寄せられるようになった。 |
| 協議会の目的を達成するためには、福祉分野や市民の見守り活動を行っている郵便局との連携が不可欠であり、効率的な周知啓発のためには防災無線担当、新聞への記事掲載、新聞折り込みチラシなどの機動的な対応も重要となる。 |
| 消費者の安全を確保する協議会は消費者被害防止の手段の一つであり、その地域に合った持続可能な対策を考えることが重要となる。 |
総評
宮城県児童館・放課後児童クラブ連絡協議会 副会長 荒木 裕美 氏
今回の事例報告を通じて、様々なつながり方を知ることができ、つながることへのヒントになったと思われます。連携というと横につながるイメージがあるが、横につないだことにより将来につながっていく縦軸も見えたように感じました。
直接会うことも大事なことだが、情報を共有することで、直接会えなくても気に掛けることができるものであり、それだけ情報には力があると感じました。
最後に
今後も、本会では本会議を通じて、様々な主体による地域共生社会の実現に向けた取組を共有することで、県内における取組がさらに活性化されように努めていきます。
